2005年度研究主題
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〔主題設定の理由〕
わたしたちの生活は「ことば」で成り立っている。「ことばの力」を育てるということは,話し方,聞き方,読み方,書き方,言語の知識などを身につけさせることや,コミュニケーション能力などを育てることにとどまらない。「言葉は心の使い」「言葉は身の文(あや)」「言葉は立居(たちい)を表す」などの言葉があるように,言葉は心を表す道具であり,人の品性や性行を表すものであると言われる。このことから,「ことばの力」を育てることは「心」を育てることでもあると考えられる。そう考えるとたいへん広い意味を持つ。
学校教育においては,「ことばの力」は主に基礎教科といわれる国語の授業を通して身につけさせることとなっており,どの学年でも国語科は全教科の中でもっとも時間数の多い教科である。2002年の学習指導要領改訂で出された国語教育の方針では,いくつか特徴的なことが述べられている。中でも,文学的文章の読解については,
(前略)特に,文学的文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め,自分の考えを 持ち,論理的に意見を述べる能力,目的や場面に応じて適切に表現する能力,目的に応じて的確に 読み取る能力や読書に親しむ態度を育てることを重視する。 |
つまり,「目的や場面に応じ」た言語能力,あるいは「日常生活に必要な話す,聞く,書く,読む」などの「基礎的な内容」を身につけることが大切だということである。国語科の授業は何のために存在しなければならないかと言えば,それはまず「学力形成」のためにこそ存在する。学力を形成しない授業はどんなに楽しくても授業とはいえない。国語科の授業で「学力形成」をしっかりと行い,ことばの力を育てることは,大変重要なことである。
しかし,国語科の授業,特に文学的文章の読解は,ついた「学力」がはっきりしないことが多い。しかも配当時数も大幅に削減されている。国語科の教科のねらいや内容を今一度とらえなおし,限られた時数の中,読解の授業を通してことばの力を育てる国語授業を創造していかなければならないと考えた。
その方法として,「討論をしくむ手だて」を考えた。討論といっても大がかりな討論指導を目的とした授業やディベート授業などを指すものではない。あくまでも授業展開の中で,討論を用いて読みを深めるということである。教材文の中での指導ポイントを的確に捉え,その部分を発問によって考えさせる。その際,子どもたちの意見が分かれるような発問を工夫することで,討論が生まれる。討論は,それによって読解が深まるばかりでなく,ことばの力を育てるさまざまな指導が可能である。ことばを根拠に考えを持ったり,ことばにこだわったりするような指導をしていくことで,ことばの力を育てていくことができると考えた。ただし,討論が生まれれば勝手に読みが深まるとは考えていない。教師が適切に関われるかどうか,適切に即時指導ができるかどうかということがたいへん重要であると考えている。
先述のように「ことばの力」を広くとらえる立場から,基本的にそれを育てることは全教育活動を通して行われなければならない。基礎学力はもちろん,よりよい言語環境(ソフト面・ハード面)を整備していく必要がある。日常的に,ことばの力を育てることを意識していくことが,たいへん重要である。そのことが,国語科の学習の中での「学力形成」を支えることにつながるし,また,国語科で形成した学力を他に生かすことにもつながると考えている。
今年度を2年計画の1年次目とし,授業実践のほかに理論学習・環境整備を行い,次年度はそれらを生かして実践を深化させる。
〔この研究を通して育てたい子どもの姿〕
・ことばを根拠に考えを持つ子ども ・ことばを大切にし,ことばにこだわって考える子ども ・自分のことばで表現する子ども |
討論をしくむ手だてを工夫することで,ことばを根拠に考えを持つ子どもを育てることができる。
1 討論をしくむ発問づくり |
(具体的なポイント)
2 全員参加の授業づくり |
(具体的な方法)
・列指名
・ノートに作業をさせてから考えや立場を明らかにさせる
・○者択一
3 即時評価・即時指導 |